トヨタの「ヤリス」、街で本当によく見かけるようになりましたね。
TNGAプラットフォーム採用で走りはキビキビしてるし、デザインも凝縮感があってかっこいい。
私も大好きなコンパクトカーの一台です。
でも、ヤリスと聞くと「あれ?昔はヴィッツじゃなかったっけ?」と疑問に思う方も多いんじゃないでしょうか。
かくいう私も、最初は少し戸惑いました。
そうなると、「ヤリスの名前の由来ってそもそも何だろう?」とか、「なぜヴィッツから名前変更したの?」といった理由が気になってきますよね。
どうせなら、あの過激なスポーツモデル「GRヤリス」の名前の意味まで、まとめて知っておきたいところです。
この記事では、そんなヤリスの名前に関する疑問をスッキリ解決します。
ヤリスという名前に込められた意外と深い意味から、長年親しんだヴィッツとの関係性まで、クルマ好きの視点で分かりやすく解説していきますね。
- ヤリスという名前が持つ本当の意味
- ヴィッツからヤリスへ名前変更した理由
- 旧名ヴィッツ(Vitz)の名前の由来
- GRヤリスの「GR」が示すもの
ヤリスの名前の由来は造語だった
まず結論から言うと、「ヤリス(YARIS)」という名前は、実はトヨタが作ったなんです。
てっきりどこかの国の言葉がそのまま使われているのかと思っていましたが、違いました。
しかも、2つの異なる国の言語を、絶妙なバランスで組み合わせているんですよ。
ここでは、その名前の由来を詳しく見ていきましょう。
ギリシャ神話の女神「カリス」

ヤリスの名前のベースの一つは、なんとギリシャ神話。神話に登場する女神さまの名前が関係しています。
その名は「Charis(カリス)」。
ゼウスの娘とも言われる女神です。
複数形だと「カリテス(Charites)」と呼ばれ、一般的には「三美神」として知られていますね。
このカリスは、「美」や「気品」「優雅」を司る女神だとされています。
ヤリスの持つ、コンパクトながらも安っぽさを感じさせない洗練されたスタイリッシュなイメージ、そして躍動感のあるデザインに、ぴったりの言葉を選んだな、という感じがしますね。
ドイツ語の「ヤー(Ja)」

そして、この優雅なギリシャ神話の女神「カリス」と組み合わされたのが、ドイツ語の「Ja(ヤー)」です。
これは知っている方も多いかもですが、英語の「Yes(はい)」と同じ意味を持つ、非常に肯定的な言葉ですね。
「なんでここでドイツ語?」と少し不思議に思うかもしれませんが、これにはヨーロッパ市場、特に自動車大国であるドイツ市場での成功を強く意識したトヨタの狙いが感じられます。
世界戦略車として、激戦区のヨーロッパで確固たる地位を築くぞ、という意気込みの表れかもしれません。
カリスの持つ「気品」や「優雅」
名前の由来となった「カリス」が司る「気品」や「優雅」は、そのままヤリスという車に与えたいイメージだったんだと思います。
特に現行の4代目ヤリスは、「B-Dash!(ビーダッシュ)」というデザインコンセプトのもと、弾丸のようにダッシュする躍動感が表現されています。
ただ小さいだけ、ただ実用的なだけじゃなく、所有する喜びや、乗るたびに高揚するような「美しさ」をコンパクトカーに持たせたい、という開発チームの想いが伝わってくるようです。
ヤーに込めた「受け入れられる」期待
一方の「ヤー(Ja)」、つまり「Yes」という言葉。これには、もっとストレートな願いが込められています。
それは、「このクルマが、ヨーロッパをはじめとする世界中の市場で広く受け入れられますように!」という、グローバルな成功への期待です。
同時に、デザイン、走り、燃費、安全性、その全ての面において、世界中のお客様から「Yes(イイね!)」と言ってもらえるクルマにするぞ、というトヨタ自身の強い決意表明でもあるように、私には感じられます。
ヤリスが持つネミングの意味
というわけで、「カリス(Charis)」と「ヤー(Ja)」という2つの言葉を組み合わせて「YARIS(ヤリス)」という名前が誕生しました。(発音しやすいようにChがYに変わった、という説が有力ですね)
結論として、「ヤリス」という名前には、「優雅な美しさを持ち、世界中で広く支持される(Yesと言われる)クルマ」という、非常にグローバルで前向きな意味が込められているんです。
単なる響きだけでなく、しっかりとした意味と戦略を持って名付けられたことがわかります。
クルマの名前の由来を調べると、こういう開発者の想いが見えてくるのが面白いですよね。
ヤリスの名前の由来とヴィッツ
さて、ヤリスの名前の由来は分かりました。
でも、私たち日本人にとって一番しっくりこない点、それは「なぜ、あれほど長年親しんだヴィッツの名前をやめてしまったのか?」ということかもしれません。
ここからは、ヤリスの名前の由来とも深く関わる、ヴィッツからの名前変更の背景を、もう少し詳しく探っていきます。
なぜヴィッツから名前変更したのか
日本国内において「ヤリス」という名前が使われ始めたのは、2020年2月に登場した4代目の現行モデルからです。
それ以前、1999年に登場した初代モデルから2019年まで販売されていた3代目モデルまでは、一貫して「Vitz(ヴィッツ)」という名前で販売されていました。
約20年間、トヨタのコンパクトカーの「顔」であり続けたわけですから、そのブランド力は絶大でした。
私も含め、多くの方が「トヨタのコンパクトカー=ヴィッツ」というイメージを持っていたと思います。
それが4代目へのフルモデルチェンジという大きな節目で、突然「ヤリス」へと変更されたのですから、当時は「なんで?」と本当に話題になりましたよね。
車名をグローバル統一した理由
名前が変更された最大の理由、それは「車名のグローバル統一」です。
実は、私たちが「ヴィッツ」と呼んでいたあのクルマ、海外(特にヨーロッパ、北米、オーストラリアなど)では、1999年の初代モデルからずっと「Yaris(ヤリス)」という名前で販売されていたんです。ご存知でしたか?
つまり、同じクルマなのに、日本では「ヴィッツ」、海外では「ヤリス」と、名前がバラバラな状態が20年も続いていたわけです。
マーケティング効率の向上
これを4代目モデルの登場を機に、「もう世界中どこでもヤリスにしよう!」と統一したのです。
考えてみれば、世界中で同じ名前を使う方が、CMや広告、プロモーション素材などを共通化でき、マーケティング戦略的にもはるかに効率が良いですよね。
ブランド価値の統一
そしてもう一つ。
「トヨタのグローバルコンパクトカーは『ヤリス』である」と、世界中のどこでも同じ認識を持ってもらうことは、ブランド価値を構築する上で非常に重要です。
名前が異なると、どうしてもブランドイメージが分散してしまいますからね。
WRCとの連携強化が目的

そして、グローバル統一と並んで、もう一つ非常に大きな理由があります。
というより、こちらが本命の理由だったかもしれない、と私は思っています。
それが、モータースポーツ活動との連携強化です。
トヨタは「ヤリスWRC(Yaris WRC)」というラリーカーで、モータースポーツの最高峰の一つである世界ラリー選手権(WRC)に、「TOYOTA GAZOO Racing」として参戦し、素晴らしい成績を収めていました。
「ヤリス」の活躍と日本の「ヴィッツ」というジレンマ
しかし、日本ではそのベース車両が「ヴィッツ」という名前…。
せっかくレースの世界で「ヤリス」が大活躍しても、日本では「ヴィッツ」が売られているため、その宣伝効果やブランドイメージがイマイチ直結しにくい、という大きなジレンマがありました。
当時のトヨタは、豊田章男社長(現会長)のもと、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を強力に推進していました。
(出典:トヨタ自動車株式会社『2019年トヨタモータースポーツ活動発表』)
レースは単なる広告ではなく、クルマを鍛える場であり、そこで得た技術や情熱を市販車にフィードバックする。
その理念をストレートに伝えるためにも、レースで戦うクルマと、お客様が乗るクルマの名前を一致させる必要があったのです。
車名を「ヤリス」に統一することで、「あのWRCで勝っているヤリスの市販モデルですよ!」と、レース活動の成果をダイレクトに市販車のイメージアップと販売に結びつける。
これは非常に大きな目的だったと思います。
旧名ヴィッツ(Vitz)の由来

では、ヤリスの前身である「ヴィッツ(Vitz)」には、どんな意味があったのかも気になりますよね。
ヤリスに負けず劣らず、こちらも素敵な意味が込められていました。
「ヴィッツ」もヤリスと同じく造語です。元になっているのは、ドイツ語の「Witz」という単語。
この「Witz」というのは、「機知」「才気」「気の利いた」といった意味を持っています。
初代ヴィッツが登場した1999年当時、そのデザインや広い室内空間、優れたパッケージングは、それまでのコンパクトカーの常識を覆す、まさに「才気あふれる」ものでした。
「才気あふれる、賢いコンパクトカー」というニュアンスが、当時のヴィッツには本当にぴったりだったんだなと思います。
ヤリスとはまた違った、知的な響きを持つ名前でしたね。
GRヤリスの名前の由来

ヤリスファミリーの中でも、ひときわ異彩を放つのが「GRヤリス」です。
この「GR」って何のことか、もうお分かりの方も多いかもしれませんね。
「GR」とは、トヨタのモータースポーツ部門であり、究極のスポーツカーブランドでもある「GAZOO Racing(ガズーレーシング)」の頭文字です。
つまり、「GRヤリス」という名前は、「GAZOO Racingが本気で手がけたヤリス」という、非常にストレートなネーミングです。
「GRヤリス」はヤリスの名前を使った別物のマシン
ここで重要なのは、GRヤリスは「ヤリスのスポーツグレード」という生易しいものではない、ということです。
通常のヤリスが(国内では)5ドアなのに対し、GRヤリスはWRCの規定に合わせた3ドア。
プラットフォームも、フロントはヤリス(GA-B)、リアはカローラなど(GA-C)を組み合わせた専用設計。
まさに「WRCで勝つため」だけに開発されたホモロゲーションモデル(レース参戦の前提となる市販車)なんです。
「ヤリス」という名前は共有していますが、中身はほぼ別物の「レーシングマシン」に近い存在。
それがGRヤリスなんですね。
ヤリスの名前の由来まとめ

今回は、ヤリスの名前の由来について、ヴィッツからの変更理由なども含めて掘り下げてみました。
最後に、今回のポイントをもう一度整理しておきますね。
ヤリスの名前の由来と変遷
車名 由来・意味 主なポイント ヤリス (YARIS) ・ギリシャ神話「Charis(カリス:美・気品)」・ドイツ語「Ja(ヤー:Yes)」→ 2つを組み合わせた造語。 「優雅な美しさを持ち、世界中で広く受け入れられるクルマ」という意味。グローバル戦略車としての想いが込められている。 ヴィッツ (Vitz) ・ドイツ語「Witz(ヴィッツ:機知・才気)」→ 造語。 「才気あふれる賢いコンパクトカー」という意味。初代の革新性を象徴する名前だった。 GRヤリス (GR YARIS) ・GAZOO Racing (GR) + YARIS GAZOO Racingが「WRCで勝つため」に開発した特別なモデル。名前はヤリスだが、設計はほぼ別物。 名前変更の最大の理由:
日本名「ヴィッツ」と海外名「ヤリス」を統一し、グローバルブランド力を強化すること。
特にWRC(世界ラリー選手権)での「ヤリス」の活躍を、市販車のイメージに直結させる目的が大きかった。
こうして見てみると、ヤリスの名前の由来には、トヨタの明確なグローバル戦略や、モータースポーツへの熱い情熱が色濃く反映されていることが分かります。
単なるイメージチェンジのための名前変更ではなく、トヨタの「これからのコンパクトカーづくり」、そして「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」への本気度が、この「ヤリス」という名前に込められているんだなと、私自身も改めて感じました。
